近ごろ気になる作品 2017 秋

 今回は、(いや、今回も?) いずれも白泉社系の作品。

鈴木ジュリエッタ 「トリピタカ・トリニーク」

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 前作「神様はじめました」が完結してからそんなに間が開くことなく連載が始まったこの作品、当初からヒロインが金属の環を頭につけていたり、三蔵と呼ばれる人物が登場したり、西遊記のモチーフがちらりちらりと見え隠れしていたのだが、ついに次話から西域へ法典を求めに旅立つという、原典のヴァリアントとしての性格を前面に出してくるようだ。
 登場人物もここにきて、明言こそされていないものの、猪悟能と思しき存在が登場したり、沙悟浄のポジションになるのではないかと思われる者や、もしかすると白馬は……という具合に出そろってきている。そしてなによりもこの探求の旅は、天上界の求めるものではなく冥界が主導するという大きな特徴があり、いったいどんな冒険譚が始まるのかとても楽しみなところだ。

筒井美雪 「未完成ピアニスト」

 この作者、以前は個性が強い作風だったような記憶があるが、それを抑えての最新作。これまで短期集中的に掲載を繰り返して、次話で一区切りになるもよう。
 ヒロインは天部の才能を持ちながらも、極度のあがり症のためになかなか人前できちんと演奏できないでいるピアニスト志望の音楽高校生。コミックではなかなか表現に苦労しそうな素材だが、悲痛さを滲ませた演奏シーンや、楽しそうにピアノに向かうステージをしっかりと描き上げているので注目している。
 作者はピアノという素材を選んだことを悔やんだこともあるようだが、たしかにコンサートグランドのピアノは、鍵盤の数は多いし、ボディも角度によってものすごく難しい形状になる。しかしとても面白い素材を扱った物語なので応援したい。

未完成ピアニスト 1 (花とゆめCOMICS)

未完成ピアニスト 1 (花とゆめCOMICS)


斉木久美子 「かげきしょうじょ!!」

 これまでも何度も取り上げているタイトルだけども、最新話ではついに……ついに、もう一人のヒロイン、奈良っちが一皮むける時がやってくる予感に満ちている。

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 最近の回で、少しずつその兆しを見せてはいたが、奈良っち自身が抱えている課題の一つを乗り越えて、高みへと上がろうとしているのを目の当たりにしてわくわくが止まらない。
 今回の見せ場の大ゴマには思わず目頭が熱くなってしまった。

 そして最新話はスピンオフ短編とのW掲載。まさかのあのキャラクターが主人公に……またしても切ない物語を持ってくる。もうほんとにこういうところが心憎い。

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