立ち向かう物語

 タイトルは書かないが、最近は喪失からの回復を描いている物語をコミックスでまとめ読みしていてけっこう心揺さぶられたりしているのだが、それとは別の物語を紹介したい。

 筒井旭「Jumping」は月刊「Cocohana」連載中。現時点では2巻までコミックスが発売されている。

 主人公は手書きの文字が汚いことでいじめられた経験を持つ大泉蘭。大学受験に失敗して引きこもりの生活を続けていたが、高校時代に唯一の親友だった越後屋小百合に誘われて訪れた青森の大学で、曰く付きの過去を持つ競走馬「津軽」と出会う。
 この津軽はある事件をきっかけに人を乗せることを拒否するようになってしまった、馬術部の問題児的な存在なのだが、蘭に対してだけは他の人とは違う態度を見せる。蘭も津軽に対しては気持ちが通じているような感覚を持ったりする。

 ともかくも、蘭と津軽の姿がとても印象的だ。ともに居場所がないもの同士だが、蘭たちの姿にはこの先になにかが変わりそうな予感がいつもあった。

 物語は進み、蘭は大学の馬術部の面々との交流が深まり、2度目の受験もなんやかんやの末に突破し、新入生との間でも新しい関係が築けそうな気配が見えてきている。

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 蘭はすでに変わってきているし、さらに変わる予感が物語には満ちている。
 最新話は明日28日発売の誌面に掲載されるだろうが、今、読める連載の最後の数ページには打ち震えるしかない。この先が楽しみな物語のひとつだ。

勉強で思い出したこと

 自分では自分のことをけっして「勉強ができない」とは思っていなかった。殊更に高校時代は「できない」のではなく「しなかった」。

 いや、勉強せずとも授業について行くことができた、などと主張したいわけでは無い。逆に受験テクニックを前面に出したり、丸暗記を前提にした授業には嫌気がさして、特に高校生の間は勉強をしなかった日々を過ごしていた。
 それでもすべての教科に対してそうだったわけではない。生物は興味を持って取り組むことができた。ATPあたりの構造は暗記していないけどね。選択科目の芸術はそれなりにやっていた。ただ、科目担任が個性が強すぎる教師だったので、それなりに覚めてみてはいた。

 繰り返すけども、勉強は嫌いだと感じてはいない。でも、丸暗記とかいうのは面白くない。やる気が無い。興味が持てればそれなりにのめり込むこともあるので、それなりにその後もやってこれている。はずだ。たぶん。

 そんな感じに緩くやってきた勉学だが、一度だけちょっとした危機があった。

 それは小学校の低学年の頃。算数で「九九」が始まったあたりのことだ。風邪を引いて数日、下手すりゃ一週間ほど学校を休んでいる間に九九が始まっていて、授業に復帰したときに呪文のような文言がまったくわからなかったので呆然とした。現在の意識と知識で言えば、まさに「呆然と」した。ほんとうにわけがわからなかったのだから。
 それでも必死に追いつこうとした(はずだ)。なんとしてでも呪文を覚えようとがんばった(はずだ)。あの「ににんがし、にさんがろく、にしがはち……」とひたすら覚えなくてはいけないあの呪文を。

 ああ、そうか。もしかして丸暗記しなくてはいけない、というものがあまり好きになれないでいたのは、こんなところに原因があったのかもしれない。今にして思えば。

 でも、だいじょうぶ。学校を卒業してからでも学ぶことはできるし、興味を持つ対象も見つかるし、勉強は一生もの。

最近アニメ系音楽の購入ペース上がってる?

 この1年くらいそんな感じがするので、ちょっとまとめて振り返ってみることにした。


 機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズはシリーズ開始から数話遅れて追いかけ始めたのだけど、第1クールのED曲はガツンと攻めてきてるなという印象だった。ヘヴィな物語に呼応するような曲が紅白歌合戦で流れたのには震えるし、第2クールで1度だけまた使われるのにも納得するしかないというもの。


TVアニメ「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」神化・傑作曲集

TVアニメ「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」神化・傑作曲集

 曽我部恵一が「バンバンバン」とか、オンエア時には思わず声を上げそうになったのですよ。架空の昭和では40年代でもテクノな音楽が流れていてなかなか面白いところ。


SIX SAME FACES ~今夜は最高!!!!!!~

SIX SAME FACES ~今夜は最高!!!!!!~

 第1クールのED曲は、おでん具材を使ったクレイ・アニメーションっぽい画面と合わせて、イヤミ役の鈴村健一の凄さにびっくり。さらに6つ子分別バージョンがそろってるとかクレイジーな作り込み。


「放課後のプレアデス」オリジナルサウンドトラック

「放課後のプレアデス」オリジナルサウンドトラック "むつらぼし"α

 ほんと、「放課後のプレアデス」はもっと評価されても良い作品なのだけど。 さりげに良い曲があるのと、なるべく制作陣に資金還元したいので、入手可能なうちに購入した1枚。



 作中では環境音程度だったデーモン閣下の「時の過ぎゆくままに」や高野寛の「さよならアメリカ さよならニッポン」は必聴!


 ハイクでも書いたけれども、こういう感じのキッチュなポップは実は好み。そしてTVサイズで切り取られた以外のパートがけっこう面白い。


Walkure Attack!(初回限定盤)(DVD付)

Walkure Attack!(初回限定盤)(DVD付)

 これはハマった。単なるBGMで終わっていないのがそれはそれは思いっきり刺さってる。
月刊 CUT 2016年8月号 (株式会社ロッキング・オン 刊行) 河森正... - 勝手に引用 - ごみ - はてなハイク
 だいたいのところはハイクで語ったから、くり返すのはやめておこう。
 そして、
絶対零度θノヴァティック

絶対零度θノヴァティック

 予約したので、来月には届くと思う。

最近の注目作家

 週刊少年サンデーは少年誌としては3位の位置を維持しているというか、そこに落ちついているというか、そんなイメージがあるが、雑誌戦犯の販売数が減り続けている中で、最近の数字はいろいろと言われるレベルになってきている、らしい。そんな週刊少年サンデーは昨年あたりから新人の登用を増やしてきていた。

togetter.com

 そんな流れの中で登場してきた数ある作品のうちの一つが目をひいた。峰浪りょう初恋ゾンビだ。

websunday.net

 目をひいたのは誌面や線が手慣れているように感じたところだ。主人公は額に受けた怪我がきっかけで、男子限定で初恋相手の理想の姿が見えるようになってしまう――というファンタシーな設定で始まる物語だが、それを違和感なく紡ぎはじめ、読み手を自然と引き込ませる画面が出来ている、という点で同時期に前後して始まった連載の中では常に気にしていた作品だ。

初恋ゾンビ 2 (少年サンデーコミックス)

初恋ゾンビ 2 (少年サンデーコミックス)

 高校生活をベースにしたラブコメ展開はテンポも良く、今月にはコミックスも2巻目が出る。そんな作者の、以前の作品があるのを知ったのは最近のことで(調べればすぐにわかることではあったが、そこまではしていなかった)、それを読むことが出来た。
 「ヒメゴト 十九歳の制服」は先日まで期間限定で、1巻~3巻が無料で読むことが出来るキャンペーンが行われていて、その後に残る4巻から8巻までもコミックスで読み通すことが出来た。読み終えて感じたのは、すごい作品だというものだった。

csbs.shogakukan.co.jp

 作品を他の人に勧めるからには、その魅力を伝えなければならないのだが、一方でネタバレ部分には踏み込むのを躊躇しており(できれば読み進めながら色々と素直に感じてほしいという欲求がある)、上の小学館のページで一部試し読みも可能だし、wikipediaにも的確にまとまっているので、細かいところまで気になったならそちらも参考になるかもしれない。

 ただし性描写などを含むのでその手のものを受け付けない方にはおすすめはしない。

ヒメゴト〜十九歳の制服〜 - Wikipedia

 ものすごく端的にまとめれば、3人の大学生、19歳の自我と性と自由の物語だ。3人はそれぞれに秘め事を抱えている。タイトルのヒメゴトはそこに絡めているのだろう。それぞれが過去に体験した出来事により、それぞれの自我と性の意識には歪んだものがあり、その象徴としてあるのが制服だ。
 はじめはライト・コメディとして進むのかと勝手に思いこんでいた物語は、3人の心の深いところに触れるにつれてどんどんと流転する。ディープだ。

 うん、やはり語ろうとするとネタバレ部分に触れざるを得なくなる。しかしそれはやはり避けたい。とにかく、最終話での3人が行き着く先は思いもよらないところかもしれない。でもそれはちゃんと物語として完結し、そしてその後の出来事も予測できる。実に見事に着地して完結している。連載2作目でよくぞここまで描ききったと思う。1巻から8巻までを通して見ると、画面の変わり方にも気づかされる。確実に手慣れて行っている。
 だから少年誌での週刊連載でも、スタート時から手慣れた感じが滲み出ているのがわかる。掘り下げたキャラクターを作り、濃密な物語を組み上げた、それがちゃんと功を奏しているのがわかる。
 そしてふと気づくのだ。性と欲望の展開バリエーションとしての初恋ゾンビの設定にはニヤリとするしかない。そう、だから、毎週物語がどうなっているのか楽しみでしかたがない。最近注目している作家、峰浪りょう




 ところで余談ながら、「ヒメゴト 十九歳の制服」の最終巻、カバーイラストの由樹に指宿くんの面影があるように思えてしかたがないのだけども……。指宿くん、そのポジション的にも前作「ヒメゴト」にも通じるところがあるようだし、ひょっとしたら意識している部分があるのだろうか。