ラジオ(スター)は蘇る

 最近はラジオもけっこう聴いている。

 本格的なリスナー・デビューはその昔、ティーンズの頃。地元の民放AM局でのディスク・ジョッキー番組がきっかけだったと思う。全国ネットではなく、ローカルな番組の。
 DJは男性の局アナで、洋楽のランキング形式。確か週一の箱で、夕方というか宵の口くらいの時間帯だったように思う。風呂場の扉の外にラジオを置いて入浴しながら聴いたりとか、投稿したりとか、それなりに聞き込んでいた。
 それから在京キー局も聴き始める。多かったのはJOLF。その後、なぜかラジオ大阪も聴いたりしていた。いわゆる中波DXというやつ。受信感度向上のために2連バリアブル・コンデンサーと電線でループ・アンテナを作ったりしていた。実際これはかなり強力なアイテムだった。
 そういえば高校生の時だったろうか、地元NHKのローカル枠でスタジオに行ったような記憶もあるけども、あれはなんだったのだろう。


 閑話休題


 上京してからは実はそんなにラジオを聴かなくなってしまった。
 皆無ということはなく、ときどきは何らかの番組を耳にしてはいた ( はちみつぱい「塀の上で」を聴いたのはたぶん上京後数年以内のこと)が、積極的に意識して聴くという機会はなくなっていた。

 それが数年前からまた聴くようになった。きっかけは遅めの昼食で入った定食屋で流れていたTBSのキラ☆キラだったと思う。奇しくもほど無くその番組は終了してしまったが、日常の中に「ラジオを聴く」ということが再び組み込まれるようになったのだった。


 さて、ここまでが長い序文。


 2010年に radiko のサービスが始まったことも、継続的にラジオを聴くようになったことに大きく関係しているだろう。

 radiko の登場は画期的だし、なんといっても便利だ。PCないしはスマートフォンとネット環境があればラジオ番組が聴けるのだから。それも良い音質で。AM放送ですらステレオで。
 ただ、短所も radiko にはある。最大のものは、仕組み上リアルタイムでは無いということ。少なくても数秒、環境によっては数十秒~1分以上のディレイが生じている。だから時報は送出時にカットされているが、もし緊急地震速報があったとしても役に立たない可能性が高い。
 そしてネットで伝送している以上、なんらかの形でデータ通信の費用がかかる。また大災害時にはネット環境がどこまで稼働し続けるか不安もある。

 そんなこともあって、ポータブルのラジオ受信機を購入した。SONYのライターサイズと呼ばれていたモデルだ。
https://www.sony.jp/products/picture/SRF-S86.jpg
 AMとFMに対応して、単四乾電池で駆動でき、クリップ機構もあって、ポケットに入れたりするのに重宝する、お手軽価格のモデルだ。
 東京都では都営地下鉄がAM放送の再送信サービスを行っていて、乗車中や駅で待っている間にもAM放送が聴取できて便利だ。
www.kotsu.metro.tokyo.jp

 ただこの受信機にも短所があった。同調チューニングのためのダイヤル操作で微妙な動きがよく効かず、ベストな位置(= 周波数)を選ぶのがなかなかに難しいのだ。

 そこでアナログではなく、シンセサイザー・チューニングのモデルを続いて導入した。
https://www.sony.jp/products/picture/SRF-M98.jpg
 AMとFM(ワイドFMにも対応)でそれぞれ7局ずつプリセットできるので、よく聴くところをあらかじめ登録しておけば簡単に選択できる。登録してなくても、ダイヤル操作で周波数を指定できるのでどの放送局でも聞くことができる。そしてなによりも、アナログ的な「ここかな? このあたりかな?」という微妙な操作が必要なく、選局のイライラはなくなった。

 このモデルにも短所がないわけではない。
 まず付属のイヤフォンが暗いところでは左右が分りづらい。そして電池交換のタイミングを間違えて消耗させすぎたり作業にもたついたりすると、プリセットの内容が消えてしまう。
 これはまあ運用で気をつければカバーできる範囲ではある。それ以上に、単四乾電池での簡単運用と大きさのメリットは大きい。
 もう一つ短所を挙げるとすると、付属するイヤホン(実はFM放送受信時のアンテナの役も兼ねている)のプラグからケーブルへの構造がストレートなものになっていて、強度がどれほどか心配でもある。

 ただ、この二つのモデル、どちらも今では生産終了してしまった。現在のSONYのラインナップにはライターサイズに該当するモデルがない。
 つまり現状では、今のものを使い続けるしかない。壊れるまで。
 でも期待している。将来、後継モデルが復活することを。蘇ることを。




 ……といったテクストを準備しておいて放置すること何日か。危惧していたイヤホンのケーブル断線が現実のものとなってしまった。完全に切れたわけではなく、外観からも目立つ変化はないものの、右chがほとんどつながらなくなってしまった。指である角度で押しつけるようにすればつながったりするが、これでは断線しているのとなんら変わりない。
 しかたがないので、当面はアナログ機のものを流用して過ごすことにした。こちらはL字型のプラグなので、ケーブルへの負荷は少ないのではないかと思う。

 しかし、SONYのラジオのラインナップがどんどんと求めているところからは遠ざかっている。単四乾電池一本で100時間稼働というのは魅力ではあれど、モノラルの巻き取り方式イヤホンは別に内蔵してくれなくても……。FM放送受信にも対応しているのに、ステレオで楽しむには別途イヤホンを準備だなんて……。スピーカーだって内蔵しなくても……。

 だから引き続き期待する。将来、後継モデルが復活する、と。