立ち向かう物語

 タイトルは書かないが、最近は喪失からの回復を描いている物語をコミックスでまとめ読みしていてけっこう心揺さぶられたりしているのだが、それとは別の物語を紹介したい。

 筒井旭「Jumping」は月刊「Cocohana」連載中。現時点では2巻までコミックスが発売されている。

 主人公は手書きの文字が汚いことでいじめられた経験を持つ大泉蘭。大学受験に失敗して引きこもりの生活を続けていたが、高校時代に唯一の親友だった越後屋小百合に誘われて訪れた青森の大学で、曰く付きの過去を持つ競走馬「津軽」と出会う。
 この津軽はある事件をきっかけに人を乗せることを拒否するようになってしまった、馬術部の問題児的な存在なのだが、蘭に対してだけは他の人とは違う態度を見せる。蘭も津軽に対しては気持ちが通じているような感覚を持ったりする。

 ともかくも、蘭と津軽の姿がとても印象的だ。ともに居場所がないもの同士だが、蘭たちの姿にはこの先になにかが変わりそうな予感がいつもあった。

 物語は進み、蘭は大学の馬術部の面々との交流が深まり、2度目の受験もなんやかんやの末に突破し、新入生との間でも新しい関係が築けそうな気配が見えてきている。

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 蘭はすでに変わってきているし、さらに変わる予感が物語には満ちている。
 最新話は明日28日発売の誌面に掲載されるだろうが、今、読める連載の最後の数ページには打ち震えるしかない。この先が楽しみな物語のひとつだ。