*[music] *[etc] 空白の音楽

そう、まさになにもない音楽。譜面の上では休符だけ。


NHK Eテレで土曜日の朝にオンエアしている「ムジカ・ピッコリーノ」。すでに2クール分のシリーズはオンエアを終えて、2013年10月からはリピート放送になっている。
初回放送時にはだいぶ見逃してしまったので、このチャンスに見るようにしているのだが(それでも実は始めの方はやはり見逃しているものが多い)、それが今朝はジョン・ケージを取り扱った回になっていた。

いつもだとリリーフランキーの語りによるオープニング・タイトルから始まるのが、賑やかな演奏風景が冒頭にあったところから、何かが違うぞという予感と期待が高まってしまった。
そして始まる物語。これもまたいつもとは異なる経緯をたどり、行き着くところはジョン・ケージ。多少なりとも知識があれば、きっと途中で取り扱う作品がわかってしまうであろうところだ。

しかしその作品がなんといっても問題作だ。
そう、それは「4分33秒」。
三つの楽章からなるこの曲は、そのどの楽章もが「演奏をしないこと」が指定されているというものなのだ。

案の定、登場人物達はこの楽曲が演奏される現代のコンサート・ホールに迷い込み、戸惑うことになる (余談ながら、作中世界において現代は「過去の出来事」となる)。
だが彼らはやがて気づくことになる。風の吹く音に、水のしたたる音に、身体の中から響く音に。まさしく禅のひとつの境地に達するかのように。

いやはや、これほどまでにみごとに「4分33秒」のコンセプトを具現化してくるとは思ってもいなかった。正直、胸熱な時間だった。
侮りがたい教育番組に心動かされた10分間の体験だった。



いや、しかし、最後の最後にROLLYにオチをつけられるとは。これもまた粋な物語運びだった。
行きすぎてしまわないように。けして行きすぎてしまわないように。
禅の修行において、無の境地のさらに先まで進むのは険しい道だけに、むやみに日常から踏み込んでしまわないように。