夏の終わりに

 東京湾の最深部まで侵攻した颱風が去った後、二日間ほどの暑さが戻り、そしてまた気温はあまり上がらなくなった。今年の夏は、なかなかに太陽の姿を見ることがない日々が続き、しかし梅雨が終わった途端に猛烈な暑さがやってきた。
 そんな夏も、もうそろそろ終わりだろうか? そしてふと思う。9月にこんな涼しさを感じるなんていうのは、かなり久しぶりのことではなかろうか、と。

 10年ほど前のことを思い出すと、「暑さ寒さも彼岸まで」なんていうのは嘘だろうというくらいに9月下旬になっても熱帯夜が続き、天気予報を見てはため息をついていたように思う。最低気温が25度を下回るのは、10月に入って少し経った頃ではなかっただろうか。
 これからはずっとそんな年が続くのだろうと思っていただけに、今年のこの涼しくなり方はありがたさと同時に驚きも感じている。

 ところで幼少の頃の夏はどんなだっただろうと思い出そうとしてみるのだが、記憶はまったくもって曖昧で漠然としたままだ。今ぐらいの時期には、あちこちの神社で秋祭りがあって、吹く風は涼しくなっていたような気もするが、そんな風は後に付け加えられた記憶かもしれない。
 いずれにせよ、地球温暖化が進みゆく未来、夏と秋の境目がどんな様相になっているか、それは想像できるのか、それとも想像の域を超えているのか、その答えはこれから自分たちで確認していくしかないのだろう。