最近の注目作家
週刊少年サンデーは少年誌としては3位の位置を維持しているというか、そこに落ちついているというか、そんなイメージがあるが、雑誌戦犯の販売数が減り続けている中で、最近の数字はいろいろと言われるレベルになってきている、らしい。そんな週刊少年サンデーは昨年あたりから新人の登用を増やしてきていた。
そんな流れの中で登場してきた数ある作品のうちの一つが目をひいた。峰浪りょう「初恋ゾンビ」だ。
目をひいたのは誌面や線が手慣れているように感じたところだ。主人公は額に受けた怪我がきっかけで、男子限定で初恋相手の理想の姿が見えるようになってしまう――というファンタシーな設定で始まる物語だが、それを違和感なく紡ぎはじめ、読み手を自然と引き込ませる画面が出来ている、という点で同時期に前後して始まった連載の中では常に気にしていた作品だ。
- 作者: 峰浪りょう
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2016/03/18
- メディア: コミック
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高校生活をベースにしたラブコメ展開はテンポも良く、今月にはコミックスも2巻目が出る。そんな作者の、以前の作品があるのを知ったのは最近のことで(調べればすぐにわかることではあったが、そこまではしていなかった)、それを読むことが出来た。
「ヒメゴト 十九歳の制服」は先日まで期間限定で、1巻~3巻が無料で読むことが出来るキャンペーンが行われていて、その後に残る4巻から8巻までもコミックスで読み通すことが出来た。読み終えて感じたのは、すごい作品だというものだった。
作品を他の人に勧めるからには、その魅力を伝えなければならないのだが、一方でネタバレ部分には踏み込むのを躊躇しており(できれば読み進めながら色々と素直に感じてほしいという欲求がある)、上の小学館のページで一部試し読みも可能だし、wikipediaにも的確にまとまっているので、細かいところまで気になったならそちらも参考になるかもしれない。
ただし性描写などを含むのでその手のものを受け付けない方にはおすすめはしない。
ものすごく端的にまとめれば、3人の大学生、19歳の自我と性と自由の物語だ。3人はそれぞれに秘め事を抱えている。タイトルのヒメゴトはそこに絡めているのだろう。それぞれが過去に体験した出来事により、それぞれの自我と性の意識には歪んだものがあり、その象徴としてあるのが制服だ。
はじめはライト・コメディとして進むのかと勝手に思いこんでいた物語は、3人の心の深いところに触れるにつれてどんどんと流転する。ディープだ。
うん、やはり語ろうとするとネタバレ部分に触れざるを得なくなる。しかしそれはやはり避けたい。とにかく、最終話での3人が行き着く先は思いもよらないところかもしれない。でもそれはちゃんと物語として完結し、そしてその後の出来事も予測できる。実に見事に着地して完結している。連載2作目でよくぞここまで描ききったと思う。1巻から8巻までを通して見ると、画面の変わり方にも気づかされる。確実に手慣れて行っている。
だから少年誌での週刊連載でも、スタート時から手慣れた感じが滲み出ているのがわかる。掘り下げたキャラクターを作り、濃密な物語を組み上げた、それがちゃんと功を奏しているのがわかる。
そしてふと気づくのだ。性と欲望の展開バリエーションとしての初恋ゾンビの設定にはニヤリとするしかない。そう、だから、毎週物語がどうなっているのか楽しみでしかたがない。最近注目している作家、峰浪りょう。
ところで余談ながら、「ヒメゴト 十九歳の制服」の最終巻、カバーイラストの由樹に指宿くんの面影があるように思えてしかたがないのだけども……。指宿くん、そのポジション的にも前作「ヒメゴト」にも通じるところがあるようだし、ひょっとしたら意識している部分があるのだろうか。
- 作者: 峰浪りょう
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2014/11/28
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