*[music] ホルスト作曲 組曲「惑星」

長くなりそうなので、ハイクではなくブログに。




たぶん初めて意識して聴いたのは、エイドリアン・ボールト指揮のもの。FM放送で、組曲「惑星」の一部の曲を初演した指揮者ということで流れていたのを聴いたはず。
けして派手ではない演奏で、落ち着いて聴いていられたように思う。当時の音源は何度も繰り返し聞いて、自分の中にしみこんでいたはずだ。
この曲はオルガンが必要だったり、女声合唱が必要だったり、他にも編成が大きく、ふだんはあまり使われない楽器が指定されていたりとか、なかなかコンサートで取りあげられることはなく、レコードやCDでの演奏録音が頼りだった。なので演奏技術のみならず、録音技術による差もいろいろとあったはずで、いわゆる名盤といわれたものは、そのあたりの出来もよかったのだろう。
それでも自分の中では、ボールト指揮の音が一つの指標になっていたと思う。


つづいてよく聴きこんだのは冨田勲のもの。
冨田のバージョンはかなり大胆に構成に手を入れていて、例えば木星の中間部と再現部を大胆にカットしたり、天王星を一部の動機とフレーズを扱うのみにしたり、それに伴い海王星の冒頭も組み替えられたりしているが、それにより組曲全体に新しい物語を付加することも行っている。
しかし音に関しては、手間のかかる職人芸のようなことを事細かにやっている。いくつものオシレーターを何度も何度もダビングして造り上げたストリングスや、一度スピーカーから出した音をマイクで録音しなおしたハープや、メロトロンの音を加工して作り上げた女声(金星)や、富士山の麓から無線機に乗せてわざわざ変調させたパプポ親父とか、他のものも含めてどれもこれもそうとうの手間がかけられて作り上げられたものだ。
これはかなりディープに聞きこんだ。作り込みの細かさを考えていくだけでも興味は尽きない。そんなこともあって初めて購入したオーケストラ・スコア(ただしポケット版)は、このホルストの「惑星」だ。
冨田勲自身は近年、過去の音源にローランドのデジタル・シンセサイザーをダビングして再構築した Ultimate Edition をリリースしている。そのライナーで冨田は、旧作ではダビングを重ねた結果、音の芯がなくなってしまったのが残念だった (意訳)といったことを語っていたが、変更された部分を注意して聴くと、そうしたかったのかという部分がたしかに見えてくる。

それでも、自分としてはやはり TOMITAの惑星といえば、最初のアルバムの時のものが一番になっている。なにせそれだけ聴きこんだものなのだから。



最後に。
よい曲を半端にいじって泥まみれにした平原綾香は大嫌いだ。(小並感)